内科、循環器内科、漢方内科
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心臓・循環器疾患

心臓・循環器疾患

脈が飛ぶような感じ、労作時の動悸・息切れ・胸痛、下肢の浮腫みなどの症状は、心臓疾患の可能性が考えられます。また、高血圧症・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの場合あるいはご家族に心臓病の方がいる場合には、心臓疾患のリスクが高くなりますのでご注意が必要です。

心臓疾患はたくさんあるため、少し複雑に感じるかも知れません。

疾患自体がよく分からないと不安が強くなりますし、胸部の症状は「命の危険」を感じることが多く、余計に心配を募らせることになります。

用語や病態は必ずしも覚える必要はありませんので、どのような症状に気を付けたらよいか、原因となる基礎疾患に該当するものはないか、予防のために何が出来るかを知っておいて頂けると良いかと思います。気になる症状がありましたらご相談下さい。

疾患一覧


不整脈

不整脈の種類の違いにより自覚症状は様々です。「ドクンドクン」と大きく脈を打つ、一瞬脈が「飛んだ」もしくは「抜けた」感じがする、突然「ドドドドッ」と脈が速くなる、脈をとるとリズムが「バラバラ」になっている、脈が非常に遅いなどです。不整脈全体からすると治療を要する危険な不整脈は多くはありませんが、なかには注意が必要な不整脈が存在しますので、動悸や胸の不快感がある場合にはそのままにせずご相談下さい。

日常的によくみられる期外収縮と脳梗塞の発症に関与するため注意が必要な心房細動についてご説明します。

期外収縮(きがいしゅうしゅく)

通常の心臓の収縮時期から外れて早期に脈が起こる不整脈です。「急にドクンと大きく脈を打つ」、「一瞬脈が飛んだような感じ」として自覚することが多いです。心臓のどの部位から起こるかによって上室性(心臓の上の部屋=心房が起源のもの)と心室性(心臓の下の部屋=心室が起源のもの)の2種類に分けられます。

期外収縮の原因

心臓に明らかな異常はなく、先天的に不整脈が発生しやすい(あるいは経年的に不整脈が発生しやすくなる)心筋の特性を持っている場合があります。危険性は少なく積極的な治療は不要なことが多いですが、将来他の不整脈を発症する可能性があるため24時間ホルター心電図で定期的な観察を行います。動悸の自覚が強く、日常生活に支障がある場合には投薬を行うこともあります。

一方、高血圧症や心臓弁脈症、狭心症・心筋梗塞、慢性心不全などが発生原因となっている期外収縮は注意が必要です。心臓に異常がない場合とは異なり、危険な不整脈に移行する可能性が高くなります。危険度や将来のリスクは期外収縮の発生部位と連発の程度によって決まるため、24時間ホルター心電図でリスク評価を行い投薬の必要性を検討します。また、基礎疾患の管理が重要になりますので並行して治療を行います。

心房細動(しんぼうさいどう)

心房の中で異常な電気刺激が旋回し、心房を細かく振動させ、不規則に心臓が収縮する不整脈です。「急にドドドドッと脈が速くなる」、「脈のバラバラな感じ」として自覚することがありますが、全く症状がない場合もあります。

心房細動の原因

加齢、甲状腺機能亢進症、高血圧症、心臓弁膜症、狭心症・心筋梗塞、心不全、過度の飲酒など様々です。特に、加齢に関しては60代以降から増加し、80歳代では30人に1人と高率になりますので、高血圧症や心臓弁膜症のある方は60歳を過ぎた頃から定期的な検査で早期発見が大切です。

心房細動の合併症

心房細動に警戒が必要な理由は、以下の2つの合併症です。

  ① 不規則な脈により心臓の機能が低下する  

心房細動によって脈が著しく速くなる(頻脈)と、心臓が疲弊し、送り出される血液量が減少するため心機能の低下(心不全)を来します。そのため、心拍数を適正な範囲に管理するための投薬が必要になります。逆に、脈が著しく遅い場合(徐脈)にも血液を十分に送り出せなくなり、めまいや意識を失って倒れてしまうことがあります。高度徐脈に対しては有効な治療薬がないため、人工ペースメーカー植え込み術が必要になります。

  ②
心房に血栓(血の塊)ができ易くなる  

心房内に血栓が形成されると、血栓が流れて脳動脈を詰まらせ脳梗塞の原因になります。これを心原性脳梗塞と言います。心原性脳梗塞は梗塞範囲が広いため、片側半身の麻痺や失語など重大な後遺症を残し、その後の生活に大きな影響を与えます。心原性脳梗塞の予防のためには、心房細動の早期発見と血液をサラサラにする治療(抗凝固療法)が必須です。

心房細動の治療

前述の心拍数管理と抗凝固療法の他に、カテーテルによる治療(カテーテルアブレーションと言います)を検討します。必要性と適応を評価し、専門医療機関へご紹介する場合があります。


心臓弁膜症

心臓内には逆流を防止するための4つの弁(大動脈弁・僧帽弁・肺動脈弁・三尖弁)がありますが、弁の開閉の状態により閉鎖不全症と狭窄症の2種類があります。軽症であればほとんど自覚症状はありませんが、進行すると動悸や息切れ、足のむくみを生じ、最重症では心不全を発症します。

閉鎖不全症

弁が完全に閉鎖しないため、弁の隙間から血液が逆流する状態です。逆流によって、送り出すはずの血液が戻ってしまうため心臓の機能効率が悪くなります。心エコーで逆流量を評価し、逆流の程度によって重症度を判定します。

狭窄症

弁が開きづらくなり(開放不良)、心臓から血液を上手く送り出せなくなる状態です。狭くなった弁の開口部(弁口面積)を心エコーで計測し、狭窄の程度によって重症度を判定します。

心臓弁膜症の治療

先天的な弁の形成異常のこともありますが、高血圧症や動脈硬化、肺疾患が原因となります。弁自体に対する治療薬がないため、進行を予防するには基礎疾患の治療・管理が重要になります。重度の弁膜症の場合には人工弁置換術あるいは弁形成術が必要なため、専門医療機関へご紹介致します。


狭心症

心臓の筋肉(心筋)を養う動脈(冠動脈と言います)の内腔が狭くなり、心筋に十分な血液が供給されなくなる状態です。酸素・栄養の不足から心筋が機能低下に陥り、胸の痛み・圧迫感を生じます。

労作性狭心症

動脈硬化性プラーク(*)によって冠動脈がある程度狭くなると、安静時には血流量が保たれていても、労作(歩行や階段昇降など)のために心臓がより多くの血液を必要とした際に血流量が不足し、胸部症状が出現します。しばらく安静にしていると10分程度で治まりますが、同じ労作を行うと症状が繰り返し起こります。

*動脈硬化性プラーク:コレステロールや炎症性細胞などの沈着によって動脈内膜に形成されるコブ状の隆起物(粥腫)

冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症

動脈硬化による冠動脈の物理的な狭窄ではなく、冠動脈がけいれん(攣縮と言います)することで起こります。攣縮によって冠動脈が狭くなり血流量が不足すると、胸痛や胸の圧迫感を生じます。明け方や安静時に起こることが多く、血管内皮細胞の機能異常が原因と考えられています。

狭心症の診断

受診時に胸部症状がある場合には12誘導心電図で診断可能ですが、症状が治まると心電図変化も改善してしまうため、24時間ホルター心電図で労作時や夜間の心電図を記録します。24時間ホルター心電図の結果で狭心症が疑われる場合は、冠動脈造影CT検査あるいは心臓カテーテル検査が必要です。

狭心症の治療

労作性狭心症

冠動脈に有意な狭窄を認めた場合には、経皮的冠動脈形成術(心臓カテーテル治療)が必要です。専門医療機関へご紹介致します。また、冠動脈の動脈硬化が原因ですので、高血圧症や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の治療および日常生活の改善で再発を予防することが重要です。

冠攣縮性狭心症

冠拡張薬(カルシウム拮抗薬)で冠動脈を拡げ、攣縮を予防します。
過度の疲労やストレス、ホルモン異常などが誘因となりますので日々の生活習慣に対する工夫も必要です。


心筋梗塞

心筋を養う冠動脈が動脈硬化性プラークの破綻により完全閉塞し、閉塞部位から末梢の心筋が壊死(えし)に陥る状態です。締め付けられる様な胸部の激痛を生じることが多く、血流が再開するまで持続します。ただし、糖尿病の方や超高齢者では痛みが軽度もしくは軽い違和感程度のことがあり注意が必要ですので、症状が持続する場合には医療機関への受診をお願い致します。

心筋梗塞の診断

急性心筋梗塞

急性とは発症後48時間以内の心筋梗塞です。12誘導心電図で心筋梗塞に特徴的な変化を認めます(一部、心電図変化を伴わない心内膜下梗塞があります)。また、血液検査や心エコー検査で壊死した心筋のダメージを評価します。

陳旧性心筋梗塞

発症から30日以上経過したものを陳旧性(ちんきゅうせい)と言います。心筋に残ったダメージ(壊死した部位)は12誘導心電図で痕跡を確認することが出来ます。心エコー検査で残存する心機能のチェックや合併症、心不全のリスク評価を行います。

心筋梗塞の治療

急性心筋梗塞

胸痛の発症から6時間以内では、心臓カテーテル治療により心筋の梗塞範囲を軽減出来る可能性が高く、また急性期合併症のリスクもあるため、すぐさま専門医療機関へ救急搬送が必要です。カテーテル検査によって閉塞部位を確認し、冠動脈に金属製ステントを留置して冠動脈を拡げ、血流を回復します。ステント留置後は血栓形成予防のため、抗血小板薬の継続服用が必須になります。また、術後は心臓リハビリテーションを行うため10日間前後の入院が必要です。

陳旧性心筋梗塞

発症時にカテーテル治療(冠動脈ステント留置)を行っていることが多く、ステント内の血栓予防のため抗血小板薬の継続が不可欠です。梗塞(壊死)を起こした部位は心筋の収縮が失われ、特に広範囲の梗塞では著しく心機能が低下することから、心不全予防のための投薬が必要な場合があります。心不全の評価には定期的に心エコー検査を行います。


慢性心不全

心臓の血液を送り出すポンプ機能が破綻することで全身の循環不全を生じる状態です。労作時の動悸や息切れ、易疲労感、四肢の冷感、足のむくみなどを生じます。重症になると安静時でも息が切れ、呼吸困難に陥ります。

慢性心不全の原因

  心臓自体によるもの  

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、心臓弁膜症、心肥大(高血圧性心疾患)、心筋症

  心臓以外の原因によるもの  

高血圧症、糖尿病、腎不全

慢性心不全の治療

先ず、原因疾患の治療として虚血性心疾患の場合には心臓カテーテル治療、重度の弁膜症の場合には人工弁置換術・弁形成術、血圧の管理や糖尿病の治療が必要です。

心エコー検査で心臓の機能を評価し、血管内の循環血液量が適正であるか判定します。著しい足のむくみなど体の水分量が過剰な場合は、利尿剤(尿として水分を体外に排出する薬)や血管拡張薬(血管を広げて過剰な水分の心臓への負担を軽減する薬)を使用します。治療効果の判定には、胸部X線で心臓の大きさ(心胸郭比)や胸水(胸腔内に溜まった水)の有無を確認します。


動脈硬化性疾患


動脈硬化性疾患


動脈硬化とは「血管の老化」のことです。ただし、老化と言うと高齢になって起こるものと思われがちですが、厳密に言うと動脈硬化は子供のころから既に始まっています。30歳頃にはかなりの人が軽い動脈硬化、40歳以降はほとんど全ての人が動脈硬化の状態です。

動脈硬化の進行の程度は非常に個人差があり、遺伝的な要因も関与しますが普段の生活習慣が大きく影響しますので、食事や生活習慣病の改善によって動脈硬化の進行を予防することが重要です。更には、積極的な食事管理で蓄積したプラークを減らし、血管を「若返らせる」ことも可能です。

頚動脈硬化症

頚動脈(けいどうみゃく)は脳に血液を送る左右一対の血管ですが、動脈硬化によって頚動脈の内腔が狭くなり脳への血流が不足する状態です。動脈硬化が進行してプラークが破綻すると、プラークの内容物や血栓が脳動脈に詰まり脳梗塞を発症することになります。高血圧症や糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなど動脈硬化のリスクを高める疾患がある場合には特に注意が必要です。

頸動脈硬化症の症状

中等度の狭窄までは全く症状はありません。著しい狭窄によって脳への血流が不足すると、上下肢の脱力感(力が入りづらい)、半身の感覚異常(痺れなど)、話しづらい(呂律障害)などの症状が現れることがあります。

頚動脈硬化症の治療

軽度~中等度の狭窄では、積極的な生活習慣の改善(食事・運動管理、減量など)および動脈硬化を進行させる危険因子の治療・管理を行います。血栓形成の予防のため抗血小板薬の服薬が必要になる場合があります。

重度の狭窄では、頚動脈ステント留置術(大腿動脈からカテーテルを挿入しステントを留置する治療)あるいは頚動脈内膜剥離術(頚部を切開しプラークを除去する治療)が必要になりますので、専門医療機関へご紹介致します。

頚動脈狭窄症の改善例

頚動脈エコー検査で頚動脈の内膜と中膜を合わせた厚さ(IMT)および狭窄率(血管内腔に対するプラーク量の割合)を計測し、動脈硬化の重症度を判定します。

頚動脈狭窄症の改善例 治療前
頚動脈狭窄症の改善例 治療1年後

円形の頚動脈内の黒い部分が動脈硬化によるプラーク、カラーの部分が血流を表します。積極的な食事管理と服薬治療によって、動脈壁の厚さ(IMT)は4.9mm→3.2mmに減少、狭窄率(プラーク量)は67.3%→50.8%に改善しています。プラークが突出し狭くなっていた内腔断面が、ほぼ円形に拡大したことが確認出来ます。

動脈硬化性プラークが年齢より多いと診断された場合には、これまでの生活を同じ様に続けるとプラークは確実に増大します。血圧や糖尿病、コレステロールに対する服薬を続けていても悪化することが多いため、生活習慣の改善、特に食事管理が不可欠です。動脈硬化が強い場合でも、厳密な食事管理によって上記の様に改善することが可能ですので、将来の心筋梗塞や脳梗塞の予防のために積極的に取り組んで頂くことをお勧めします。


末梢動脈疾患

下肢動脈が動脈硬化によって狭窄あるいは閉塞することで虚血(きょけつ:血流が不足した状態)となるため、歩いてしばらくすると膝から下の重だるさ・痛みを生じます。少し休むと軽快し、また歩き出すと痛くなることを間欠性跛行(かんけつせいはこう)と言います。下肢動脈エコーや下肢造影CTなどで狭窄の程度・部位を確認します。動脈硬化が原因ですので、高血圧症、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の管理・治療が大切です。重度の場合には血行再建術(カテーテル治療やバイパス手術)が必要になります。